シネマ法話⑤『リトル・ブッダ』より

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倶会一処

[ 『仏説阿弥陀経』より(『浄土真宗聖典註釈版』124頁)]

「俱(とも)に一つの処(ところ)で会(あ)う」阿弥陀様のお浄土でまた共に合わせていただくというお言葉です。

『リトル・ブッダ』

1993年制作/イギリス・フランス合作

監督・原案:ベルナルド・ベルトルッチ

 アメリカのシアトルに住む9歳の少年・ジェシーの家族のもとに、ブータンの僧院からの使節が訪れ、ジェシーは高僧ラマ・ドルジェの生まれ変わり(活仏)であると彼の両親に告げました。そして少年に仏陀の本を渡します。動揺する両親でしたが、母はその本を少しずつ読み聞かせます。徐々に少年は2500年も昔のシッダールタ王子(仏陀)の生涯に興味を持ちます。突然のことに戸惑っていたジェシーの父は、ある事をきっかけに、ジェシーを連れてブータンに行き、生まれ変わりについて確かめるという使節の僧からの提案を受け入れました。

 仏教の世界観では、生きている間の行いによって、死後に地獄界、飢餓界、畜生界、阿修羅界、人間界、天上界の六道のいずれかに生まれ変わることになっています。いずれの世界も迷い、苦しみの世界です。その六道を輪廻し、迷いから抜け出せずにいるのが私たちです。そして仏教の目的とは、その迷いの世界(六道)から抜け出すことです。

 私事ですが、先月父を胃癌で亡くしました。父のことを、まだまだ元気だろうと勝手に思っていたもので、何も食べることが出来なくなってしまった父を見送ることは、とても辛いことでした。お釈迦様は私達の苦しみの中でも一番は愛する者との別れであるとお説きになりましたが、その通りだと強く実感しました。

 浄土真宗においては、すべてのいのちを必ず救うと誓われた阿弥陀様の御心に苦悩の解決をたずねていくことが六道から抜け出す手立てとなります。大切な人を亡くした悲しみは消えませんが、先立った人は阿弥陀様と同じはたらきをする仏様となって私達のところへ還って来てくださいます。そして、様々なご縁を通して仏と成られた先立った方に出会っていくところに、悲しみが悲しみのままで終わることはなく、この人生を力強く歩む道筋が明らかになっていくのです。

 父を亡くした悲しみは決して消えることはありませんが、お浄土の仏様となった父とまた出会えるところに大きな安心感を覚え、阿弥陀様の救いの確かさを感じたことでした。

仏陀となるシッダールタ王子はキアヌ・リーヴスが演じています。彼は本作の出演をきっかけに仏教に大きく影響を受けたと言われています。そして多くの慈善事業に力を入れているそうです。本作はベルトルッチ監督のオリエント三部作『ラストエンペラー』『シェルタリングスカイ』の三作目です。音楽は先の二作同様に坂本龍一氏です。

 西欧のキリスト教においては輪廻転生の考え方はないということですが、西欧の目で見た、現代も続くチベット高僧の生まれ変わりと仏陀の物語を是非ご覧ください。

                                    (合掌)


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