シネマ法話 ① 『しあわせの隠れ場所』より

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今回のご讃題は

煩悩にまなこさへられて 摂取の光明みざれども

大悲ものうきことなくて つねにわが身をてらすなり

(『高僧和讃』「源信讃」)

【煩悩に眼をさえぎられて、あらゆるものを摂め取るという阿弥陀仏の光明を見ることはできないが、その大いなる慈悲は見捨てることなく、常に私を照らしてくださっている】

というご和讃です。

映画『しあわせの隠れ場所』原題『The Blind Side』

 2009年のアメリカ映画で、日本では2010年に公開されました。原作はノンフィクション作家のマイケル・ルイス氏の『ブラインド・サイド・アメフトがもたらした奇跡』です。この作品で女優サンドラ・ブロック氏はアカデミー賞主演女優賞を受賞しました。

 不幸な環境で生まれ育った少年マイケル・オアーを引き取り、後にプロフットボール選手となる彼の才能を見いだし支えた、リー・アン・トゥーイとその家族の実話をもとにした心温まる作品です。マイケルの無防備な部分を守り、支え続けたアン。アメリカンフットボールのクォーターバックの死角(ブラインドサイド)を守る重要なポジションにかけた原題は言い得て妙です。

この作品の一場面です。

 アメフト強豪大学のスカウトをひっきりなしに受けるようになったマイケル。最終的に、自分を引き取ってくれたアン夫妻の出身校の大学への進学を決意します。ところが、その大学選びに不正があったのではないかと疑う全米大学スポーツ協会から調査が入ります。「アン夫妻が自分たちの母校に強い選手を送り込むためにマイケルに近づき誘導した」という調査員からの指摘に、マイケルは混乱しアンのもとを飛び出してしまいます。アンもまた、姿を消したマイケルを捜しまわる中、自分は果たしてマイケルの望みをちゃんと聞いていたのかと自問自答します。そして、生まれ育ったスラム街に戻っていたマイケルに「あなたの決断を私は尊重する」と静かに伝えるアンに、マイケルは家族の確かな愛を感じ、“ありのままの自分でいいのだ、そのままで望まれているのだ”と本当のことに気づかされました。アメフト無しの自分でも関係ない、受け入れられていると心が定まり、アン夫妻の出身校に進学を決めます。

この場面を観て私はハッとしました。

 自分の思いに振り回され、本当のことが見えず悩み苦しんでいる。そういう自分自身の姿に気付かないでいるのが私たちです。そして、そんな私だからこそ阿弥陀様は放っておくことが出来ないと願いをたてられました。そのことを表したお言葉が

「大悲ものうきことなくて つねにわが身をてらすなり」

です。

 そんな阿弥陀様のお姿と、逃げ出したマイケルを追いかけて迎えに行くアンの姿が重なり、アンの言葉で家族の愛に気付いたマイケルの姿で今回のご和讃を思い出しました。

 不幸な生い立ちで見過ごされてきたマイケルに出会い、彼を助けずにいられなかったアンの行動力に、清々しい気持ちになれる映画であり、私の煩悩の深さこそ阿弥陀様の大悲の深さでありましたということを気付かせていただいた映画でした。

皆様もぜひご覧ください。

                                     合掌


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